2020年09月08日 ---- 天吾

想い出

boss-3

昭和60年ころの話。私は前田建設工業の土木職員として現場監督をしていた。◆春の天気の良い土曜日、現場は近々始まる大工事の準備中で、まだのんびりとしたものだった。私は現場を回ったり事務所に戻って設計図書を睨んだりしていた。その現場は前田建設本社すぐそばであったため社長や支店長がふらっと覗きに来るかもしれない。先輩社員たちは緊張していた。ピリピリしていた。20歳代だった生意気盛りの私はそんな先輩たちのピリピリした感じが面白かった。普段の自分よりも良く見せようというムードが嫌だった◆お昼頃、大所長がやってきた。彼は40歳を少し超えたところだったが4つの現場の統括所長をしていた。若き大所長。なぜかこの大所長は私にはとても優しく接してくれた。その日も現場に来るなり「おーい、キノシタ、ちょっと付き合え」と言って歩き出した。「どこへ行くんですか?」と言う私の問いに答えもせずさっさと前を歩く。やがて彼は後楽園にある黄色いビルに入って行った。そう、後楽園の「場外馬券売り場」◆前田建設本社のすぐそばである。社長や支店長が見ているかもしれない。だが若き大所長はそんな小さなこと気にしない。「やることやってりゃ社長も支店長も怖くないよ」と背中で教えてくれた。ポケットから競馬新聞を取り出すとすぐに馬券を買った。数万円分、当時の私の一カ月の小遣いより多い額の馬券を買った。◆2.3レース楽しんだ。彼は続けて当たった。儲けが10万円を超えた。「おっ、キノシタ、オマエが一緒だと当たるねえ。ホレ、これ小遣い」などと言いながら自分の勝ち分の中から2万円もくれた。(5千円だったかもしれない。記憶がはっきりしない。とにかく当時の私にとっては大金だった)◆最終レースになった。彼はそれまでで勝ったカネ全部(20万円近く)を1点買いした。「これが当たったら200万だな」などと言っていた。「オレも買ってみようかな」と私が言うと「やめとけ」と言われた。◆案の定、最終レース、外れた。彼は「あーあ、200万円はまた今度だな」などと笑顔で言っていた。そして私に向かって「楽しかったな」と言ってくれた。私は楽しいよりも嬉しかった。とてもとても、いい思い出。◆あのカッコよかった若き大所長、川嶋信義さんの思い出を肴に昨夜も神楽坂で飲んでいた。川嶋さんが亡くなって明日でまる7年。何年経っても思い出すたびに涙が出てくる。ありがとうございました。明日、挨拶に伺いますね。

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2020年09月25日 ボスの
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  • 午前Vポート研究
  • 午後広告宣伝会議
  • 夕方銀座で会食
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