◎2015年12月17日 ---- ボス ◎
- 娘の誕生日
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長女が産まれたのを機に葛飾区から練馬区の下石神井へと転居した。3年後に長男が産まれるが、彼は幼い頃病弱で入退院を繰り返した。私は仕事が忙しく、家庭のことは家人に任せっぱなしであった。家人は長男を連れ病院通いのため、娘には寂しい思いをさせた。◆娘が5歳のときのこと。その日、私は久々に日曜日を自宅でのんびりと過ごしていた。息子の具合も良かった。家族4人で散歩しよう、ということになった。目的もなくぶらぶらと近所を歩いた。環八沿いに、それまで気が付かなかったフレンチレストランがオープンしていた。昼間も営業しているようだ。私は久々の家族と過ごす休日が嬉しくて、家人に言った。「あのレストランでお茶しようよ。きっとケーキもおいしいよ」 家人も嬉しそうに「いいわね。でも高くないかしら?」と答えた。「なんとかなるよ」私はレストランの入り口の階段を上った。その入り口脇に何か書いてある。「申し訳ありませんが当店では6歳未満のお子様の入店をお断りしています」◆それを読んで「残念!」とは思ったが全く腹は立たなかった。私は素晴らしいアイデアを思い付いたのだ。「6歳になったら入られるんだね。じゃあ6歳のお誕生日に来ようよ」5歳の娘に言った。◆数か月後、娘は6歳の誕生日を迎えた。私と娘は正装して、手を繋いでそのレストランに向かった。息子はまだ入店できないので家人と自宅でお留守番。事前に娘にはレストランでのマナーを教えていた。「大きな声でしゃべってはいけない。大きな音を立ててはいけない。もちろん店内をうろうろしてはいけない・・・・・」 娘は少し緊張していた。それでもとても嬉しそうだった。私が手伝いながら、ナイフとフォークで食事をした。「これ、とっても美味しい!」笑顔で、小さな声で訴えてくる。 隣の席で食事をしていた老夫婦が帰り際に声をかけてきた。「お嬢ちゃん、とってもおりこうね。いくつなの?」 娘は緊張しながらも、小さな声ではっきりと「今日が6歳のお誕生日なの」と答えた。私はとても嬉しかった。◆あれから21年が経った。昨日、娘は27歳の誕生日を迎えた。幾つになっても娘は可愛い。すっかり元気になった息子も入ってささやかなお祝いをした。
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