◎2020年01月18日 ---- ボス ◎
- 猫が羨ましかった日々
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40年前の今頃、私は連日、大学の研究室に泊まり込みで実験を続けていた。偶然にも今のヘリポートの仕事に繋がることになるのだが、実験は「繰り返し荷重をかけると物質がどう変化するか」と言うものだった。◆試験装置が10秒に1回、供試体に大きな力をかける。5分後、10分後、30分後、1時間後、2時間後、5時間後、10時間後・・の変化を測定する。材料を作り、時間おきに変化を測定し、グラフを書き、粒子の形状をスケッチする。同時にいくつもの供試体に圧力をかける。◆長くても1時間程度の仮眠しか取れない状況で実験は一月以上続いた。ビデオもパソコンもワープロもない時代。体力勝負しかなかった。おまけに研究室は九州大学で最も古い建物ですきま風どころか窓ガラスが何枚か割れていた。当時の福岡は寒かった。とてもとても寒かった。◆私は仮眠を取るために研究室に電気毛布を持ち込んでいた。そして一匹の野良猫を飼っていた。メス猫で「チサ」と名前をつけていた。寒く、眠たく、泣きそうな思いで実験を続け、資料を整理する私の横で、チサはいつも電気毛布の上でスヤスヤと眠っていた。チサのことがすごく羨ましかった。「大きくなったら猫になりたい」、不精髭を伸ばし一週間も風呂に入っていない私はそんなことを言っていた。◆今日から大学入試センター試験だという。テレビでそのニュースを観ながら40年前の寒い研究室を思い出した。受験生、頑張れ!◆そしてできれば人生で一度くらい「猫が羨ましい」と思うような経験をして欲しい。
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