◎2022年03月28日 ---- ボス ◎
- どうでもいい話(4)=(最終回)
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もう15年ほど前の話になる。六本木のその名門タイ料理店で私はよくランチを食べていた。50席を超える大きな店だ。私は店主や女将(タイ人)と仲良くなっていた。ある日、女将と雑談していたら「キノシタさん、藤原紀香さん好きですか?」と聞いてきた。「好きも嫌いもないでしょ!日本一の美女ですよ!大好きも大好きですよ」と答えると女将が「紀香さんはひと月に一度くらい、ここに来ますよ」と言う。そして「今度、紀香さんが来るとき教えてあげますね。みんなに内緒で来てください」と言う。「ええ、是非お願いします」と私は答えた◆「キノシタさーん、今夜、紀香さん来ますよ」と最初に連絡があった時、私は出張で九州にいた。残念! 一か月後、2回目のお誘い電話をいただいた時も出張中だった。残念! そして3回目のお誘い電話があった。「キノシタさん、今夜、紀香さんが来ますよ」。その日は私は東京に居た。東京にいるのだが予定が埋まっていた。お客様を我が社に招き、社内でパーティーを開くことになっていたのだ。だが3回連続でお誘いを断るのも失礼だ。なんとかなるだろう。「今夜伺います。何時に行けばいいでしょう?」私は女将に尋ねた◆指定された時間に行けなかった。女将から連絡が来る。「キノシタさん、早く来ないと紀香さん帰ってしまいますよ」と。私は社内パーティーを抜け出した。「悪い、30分ほど抜ける。急用ができた」と嘘をついた。◆その広い店は貸し切り状態。紀香さんはお友達女性5人組でカーテンで仕切られた半個室で楽しそうに語らっていた。他に客はいない。私は女将の好意で、紀香さんの席が見えやすい席に着いた。私の向かいにカモフラージュで女将が座ってくれた。女将と話ながらビールを飲んだ。紀香さんはカーテンの向こうだが声は聞こえる。店員が料理や飲み物を運ぶときにカーテンが開く。その向こうに黒っぽいシャツを着た紀香さんが座っている。驚くほどキレイ。あれがオーラというものか。◆半個室からトイレに行くために女性が出てくる。ドキッとする。紀香さんではなかった。残念。そうしているとまた一人女性が出てくる。残念、これも紀香さんではなかった。私は、立って歩く紀香さんのスタイル全身を見たかった。残念ながら紀香さんはトイレに行かない。◆紀香グループはデザートを何にしようかと話している。女将が私に「もうすぐ終わりますね。終わったらキノシタさんに紀香さんを紹介してあげますね」と言う。「えっ!ホントに?照れちゃうなあ」などと言いながらドキドキし始めた。そこに携帯電話(当時はまだスマホではなかった)が鳴り始めた。「キノシタさん(注:古い社員は私のことを「キノシタさん」と呼ぶ)何しているんですか?大丈夫ですか?どこにいるのですか? 〇〇さん(客)が『キノシタさんはどこへ行ったんだ?』って言ってますよ。こちらはそろそろ終わりますよ、シメに戻ってきてください」と言う。私は慌てた。女将に「戻らなくちゃならなくなった。残念!」と告げた。女将は「あと20分で終わりますよ。もうちょっとです。紀香さんを紹介しますよ」と言ってくれたが私は紀香よりも会社の客を取った(?)。◆あの時の判断は間違ってはいなかったと思う。多分、その後も紀香さんはあの店を訪問したことだろうが、あれ以来女将からお誘い電話は来ない。いくらも経たないうちに我が社は移転した。あのタイ料理屋に行くこともなくなった。1年後くらいに店を訪問した時には女将はいなかった。スタッフの多くも替わっていて私のことを知っている人はいなくなった。
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