◎2024年03月06日 ---- ボス ◎
- 認知症
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炬燵に足をつっこみ寝転んで紅白歌合戦を観ていると「モトミ、あんた東京に誰か高校んときの友達とかおるん?」と母が聞いてきた。「おるよ」「誰がおるん?」「吉田のチカシ君とか錦辺さんとか増井ん由紀美ちゃんとかとはちょくちょく会いよるよ」と答えると「ああ吉田クンは海崎ん百枝かどっかの人やったなあ。お父さんは造園業やったなあ。」「ニシキベさんはキレイな人やったなあ。ニシキベさんのお母さんもキレイな人やったなあ」「マスイさんちゅうのはあの増井海運の娘さんやろ。城山のふもとの大きな立派な家の人やなあ」などと一人一人の解説が始まった。私は少し驚いた。認知症が始まっていると聞いていたが私の高校時代の友人のことをしっかり覚えている。嬉しくなった。◆その嬉しさは長くは続かなかった。マスイさんの話が終わって3分くらい経ったころ「モトミ、あんた東京に誰か高校んときの友達とかおるん?」とまた母が聞いてきたのだ。「おるよ」「誰がおるん?」「吉田のチカシ君とか錦辺さんとか増井ん由紀美ちゃんとかとはちょくちょく会いよるよ」と答えると「ああ吉田クンは海崎ん百枝かどっかの人やったなあ。お父さんは造園業やったなあ。」「ニシキベさんはキレイな人やったなあ。お母さんもキレイ人やったなあ」「マスイさんちゅうのはあの増井海運の娘さんやろ。城山のふもとの大きな立派な家の人やなあ」など先ほどと全く同じ会話。◆2回目が終わって3分も経った頃「モトミ、あんた東京に誰か高校んときの友達とかおるん?」と3回目が始まった。また同じことを繰り返した◆3回目が終わったら4回目が始まった。「モトミ、あんた東京に誰か高校んときの友達とかおるん?」と4回目に聞かれ私は「おらん」と答えた。母はびっくりしたような顔をして「えっ?誰も友達おらんの?」と聞いてくる。「うん、おらん。誰もおらん」と私は答えた。そして「オレ、もう寝るわ。お先にね」と言って母の居る居間から出て行った◆あの時は母に優しく接してあげられなかったことを今になって申し訳なく思い出す。生きていたら92歳になる母のことをいまだにちょくちょく思い出す。ありがとう、母さん。
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