◎2014年04月08日 ---- ボス ◎
- 地方公務員
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大学2年生の夏休み、一か月間以上、九州の小さな町の土木事務所でアルバイトをした。事務所の方々は九州大学から来た学生アルバイトの私に興味を持ってくれた。みな優しく接してくれた。遊びたい盛りの夏休み、当初はアルバイトをしなくてはならない身を恨んだが、じきにそれもなくなった。アルバイトが楽しくなった。◆その事務所のオジサンたちの殆どが事務所から徒歩10分程度の官舎に暮らしていた。オジサンたちは毎朝8時半ギリギリに出勤してきて働き、12時のチャイムと同時に弁当を開く。それと同時にどこからか将棋盤を持ってきて隣の席の仲間との対局を楽しむ。午後1時になると盤面の駒が動かないようにそっと将棋盤を片づける。あとから続きを楽しむためだ。◆九州の夕方、5時は明るい。オジサンたちは5時になると一斉に帰宅の途に就く。一度自宅に帰り、着替えをして5時半には近所のグラウンドに集合だ。草野球の試合を始める。野球の無い日はテニスをしていた。◆みんないい人だった。みんな明るかった。そしてみんな私に親切にしてくれた。◆1年間留年をしてやっと大学を卒業し、私は前田建設工業に就職した。東京支店土木部の現場に配属された。ものすごく、ものすごく働いた。いや「働かされた」という方が正確だろう。昼も夜もなかった。土曜も日曜もなかった。辛かった。苦しかった。いつも九州の片田舎の土木事務所のことを思い出していた。後悔していた。「学生時代、もう少し真面目に勉強し、地方公務員になっていたら今ごろはテニスをしているのだろうなあ」などと汗と泥にまみれスコップで穴を掘りながら思っていた。◆ものすごく、ものすごく、働く時代が数十年間続いた。60歳近くになった。いつの間にか私は、あの頃の地方公務員の生活を「羨ましい」と思うことが全くなくなった。「羨ましい」どころか「かわいそう」とすら思ってしまう。記憶の中の彼らの行動は変わらないのに、こちらの環境の変化で「羨ましい生活」が「少し残念な生活」に思えてきたのだ。不思議なものだ。勝手なものだ。
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