◎2014年11月26日 ---- ボス ◎
- スグリさん、頑張ってね。
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女子フィギュアスケート。荒川静香さんや浅田真央ちゃんも素敵だが私は村主章枝さんが好きだった。スケートファンなら常識だが村主章枝と書いて「すぐりふみえ」と読む。全盛期は10年ほど前になる。ソルトレイクシティオリンピック5位、トリノオリンピック4位に入賞したが惜しくもメダルに手が届かなかった。2002年・03年世界選手権連続3位、2006年世界選手権2位と活躍するも、もう一歩のところで世界の頂点を逃すことが多かった。◆ファンたちは検討した村主さんに暖かい拍手を送ったが試合後のインタビューで彼女に笑顔はなかった。いつも悔しさが見えた。いつも「次回こそは!」との強い意気込みが見えた。私は彼女のそこが好きだった。◆スポーツでもビジネスでも、負けても悔しがらない人が増えている。「自分の力はこの程度だ」と勝手に決めて諦める人が多い。◆息子が小学校低学年の頃、サッカーチームに入っていた。区内の小学校の大会があり、息子の所属するチームは勝ち進んだが決勝で敗れた。私は仕事があり息子の試合は見ていなかった。帰宅後、話を聞き息子に「残念だったな」と声をかけた。すると息子は「ううん、だって優勝したチームは〇〇ちゃんっていうすごい上手い人がいるんだ。勝てるわけないんだよ」と明るく答えた。それを聞き私は激怒した。「負けて悔しくないような、そんなサッカーなら止めてしまえ!」と。きっと母親や周りの優しいオバサンたちが「よく頑張ったわね。準優勝だってすごいじゃない」などとチヤホヤしたのだろう。◆村主さんはいつも悔しがっていた。インタビューに笑顔がなかった。それを好まないスケートファンも多かったが私はその村主さんが好きだった。◆失礼ながら、とっくに引退したものだと思っていた。申し訳ない。◆11月13日(木曜)、夕方yahooニュースで「引退の村主章枝、8年ぶりにプリン解禁」との記事を読んだ。「まだ頑張っていたんだ。お疲れ様」と私は思った。◆その夜、大人になった息子と銀座のおでん屋のカウンターに並んで座っていた。息子とのくだらぬ話を楽しみながらおでんと熱燗を味わっていた。そこへ美しい女性が入って来た。私の右隣の席に座った。なんと村主さんだ!さっきyahooニュースで引退の記事を読んだばかりの村主さんだ。しかし話しかけては失礼。私は右側が気になりながらも左隣に座る息子と話を続けていた。◆しばらくすると村主さんと一緒に来られていた女性が携帯電話が鳴り店外に出た。村主さんは私の右隣、ポツンと一人でおでんを眺めていた。息子との話が途切れたときに思い切って話しかけた。「村主さん、お疲れ様でした。プリン美味しかったでしょ?」と。村主さんはとてもとてもキレイな笑顔で「ありがとうございます」と答えてくれた。プリンの話を少ししたあとに私が「応援していたんですよ」と伝えると彼女は「私、ただの気が強いばかりの選手でしたけど・・・」とこれまた素晴らしい笑顔で返してくれた。ほんの二言三言の接触であったが彼女の優しさ、気配り、芯の強さが伝わってきた。◆「やっぱりオレの目に狂いはない」と私も一人喜んでいた。左隣の息子も「テレビで見るよりも全然キレイだね。優しそうな人だったね」と言っていた。いろんなところでいろんな人との出会い。一期一会。おもしろい。「村主さん、これからも頑張り続けてくださいね」
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