2015年06月02日 ---- ボス

客は黙って去って行く(1)

boss-b

IさんとKさんは大手金融機関の若手女性社員。ともに優秀で美人、感じもとても良い。なにより仕事熱心でガッツがある。私はこの二人を高く評価していた。IさんとKさんが勤める金融機関と私は長い付き合いである。十分信頼できる会社である。先週、IさんとKさんが私の元を訪れた。魅力的な金融商品の説明をしてくれた。ちょうど私も連日、資産運用を検討しているところだった。信頼のおける会社の、熱心な、そして十分に商品知識のある若い女性二人からその商品の説明を受け、私は即決した。その金融商品の購入を約束した。まとまった額である。「来週早々に手続しましょう」と言って彼女たちを見送った。木曜日のことである。◆週が明けた昨日、月曜、Kさんから電話が入った。「大変申し訳ないのですが・・」と彼女は切り出した。「私の勉強不足でして、あの商品は・・・」と言う。続いて驚くことを彼女が口にした。「実はあの商品を購入していただいても私の(社内の)評価点にならないのです・・・」と。そして「今日、午後からお時間をいただけないでしょうか。ご説明に伺いたいのですが?」と言う。私は「この商品を売ってもIさん、Kさんの評価点にならないの?」と確認した。彼女は「ええ、そうなんです」と申し訳なさそうに答えた。◆午後、IさんとKさんが揃ってお詫びと説明に来た。彼女らが汗を拭き拭き、本当に申し訳なさそうに説明をするのを途中で遮って、私は少し大きな声を出した。「Iさん、Kさん、もしあなたたちが私の部下だったら、即刻クビですよ。クビ!営業マンと言うのはね、お客様に喜んでもらえるものを売らなきゃダメなんですよ。お客様に喜んでもらって、それが自分の喜びになる、そうした結果が自分の会社のプラスにもなるのです。そのお客様が最も喜んでくれるもの、最もそのお客様のためになるものを売るのが営業なの。あなたの社内の評価なんて客にとっては関係ないの!『こっちの商品を買ってもらっても私たちの評価に繋がらない』なんてことは客にとってはただの不快な情報なの!なんであなたの社内評価を上げるために僕がお手伝いをしないといけないの?そんな営業しちゃダメですよ。繰り返すけど営業っていうのはね、お客様に本当に喜んでもらおう、それを一番に考えなくてはダメだよ」そう言って二人を追い返した。泣きそうな顔をし、ひたすら頭を下げ、二人の有望な女性営業レディは帰っていった。◆彼女たちは帰社するとすぐに上司に報告をした。「キノシタ社長に叱られました・・・」と伝えたのだろう。彼女たちの上司である部長から電話があった。そして部長は私の元にすぐに来られた。部下の非礼を詫びた。◆「いえいえ、彼女たちの真面目さ、熱心さは十分に理解していますよ。御社にも十分感謝しています。でもいま、彼女たちが成長過程にあるときに外部の客から厳しく叱られるという経験を積むのもいいかなと思ったのですよ。そんなに部長にお詫びされるほどのことじゃありませんよ」私は思っていることを正直に伝えた。◆信頼できる金融機関の素早い対応である。おそらくIさんもKさんも昨夜は眠れなかっただろう。Iさん、Kさんの今後の成長が楽しみである。

コメント (0)

2024年12月20日 ボスの
スケジュール
  • 午前虎の門病院屋上ヘリポート見学
  • 午後事業計画見直し
  • 夕方麻布十番某所で会食
2024年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  
« 11月    

カテゴリーリスト