2016年08月16日 ---- ボス

角栄ブーム

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再び田中角栄ブームである。本屋に行くと石原慎太郎著「天才」をはじめ多くの角栄本が平積みされている。◆盆休みに買った週刊新潮は「田中角栄が教える正しい札束の配り方」との特集が載っていた。「単に金を渡すだけでなく、相手に親身に寄り添うことで、角栄は何倍もの費用対効果を得ていた。しかも角栄は党派や派閥に関係なく、あらゆる人々に金を配っていた」ということだ。いかに角栄が魅力的な男だったかということを新潮は一所懸命に書いている。もし私がその時代の男であったなら、そして角栄と接する機会があったなら、私も一発で虜(とりこ)になったのだろう。大ファンになったのだろう。だが幸か不幸か私は今の時代の人間であり、角栄と会いたくても会えない経営者だ。当時の角栄の魅力とやらを冷静に眺めることができる。だから新潮の、角栄を讃えるばかりのこの特集記事には不愉快さを禁じえなかった。◆「角栄がばら巻いた札束の総額は、数百億円とも1000億円とも言われる」として、そのばら撒き方を讃える記事を今書く意味は何なのか、理解に苦しむ。新潮、売れればそれで良いのか?◆「いかに角栄が魅力的な人であったか」「カネをばら撒くにあたって、いかに受け取る人間の立場になって気配りをしていたのか」ということを書くのなら、そして「1000億円もの金をばら撒いた」ということを書くのなら、同時に「どうやって1000億円ものカネを集めたのか。その金は角栄がばら撒いても良いものなのか」を書かねばなるまい。◆週刊誌といえども「善と悪」、「功と罪」、両方を伝えるべきではないのか? 角栄の「善」と「功」ばかりが大きく取りざたされての角栄ブーム、私は恐ろしく感じる。◆最近は「ちょっと待て!」と思い、自分のアタマでモノゴトを冷静に見詰め考える大人が少なくなった。週刊誌の報じる「善と功」のみを「すべて」と勘違いしてしまう大人ばかりだ。「また角栄さんみたいな総理大臣が出てこないかなあ」などとアホ面して知ったかぶっている大人が増えている。

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