2017年08月23日 ---- ボス

川嶋さんの教え

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私の恩人、川嶋信義さん(元前田建設工業副社長=故人)に関するエピソードをもう一つ◆昭和60年ころの話だからもう30年以上も前のことだ。その頃、私は水道橋の工事作業所で現場監督をしていた。川嶋さんはいくつかの作業所の統括所長。41歳か42歳だった。その若さで複数現場の統括所長だから異例の出世であった。◆その日は工事が一区切りついた後の、のんびりとしたムードの土曜日だった。当時は多くの会社は土曜日は昼までの勤務(通称「半ドン」)であったが工事現場は夕方6時までの勤務体制だった。午後1時ころだったろうか、川嶋大所長様が現場に来られた。大所長ではあるが、偉ぶることもなく誰にでも気さくに声をかけてくれる優しい方だったからこちらも緊張はしない。「キノシタ、お前、いま何してる?」と聞いてきた。続いて「ちょっと話がある。付き合え」と言って速足で歩き出す。私は川嶋さんのあとを追いかけた。お互いに作業服である。10分近く歩いたろうか「どこに行くのかなあ?」と思っていると川嶋さんは黄色いビルに入っていった。後楽園の「場外馬券売り場」だ。会社の勤務時間中に会社のマークの作業服を着て、大所長がペエペエの部下を連れて「馬券売り場」へ。しかも「馬券売り場」は前田建設本社からは目と鼻の先。誰が見ているか分からない。それでも川嶋さんは動じることはない。◆なんの話をしたのかは覚えていない。どうってことない話をしながら競馬を楽しんでいた。最初のレースで川嶋さんは2万円分の馬券を買った。びっくりした。メインレースでもないのに2万円も! 当たった。2万円が8万5千円になった。「おっ、キノシタは幸運の男神様だな」と言って五千円札を私に差し出した。「取っておけ、小遣い」と言ってくれた。「えっ、いいんですか?」と答えて私はその五千円を受け取った。川嶋さんは次のレースも勝ち8万円が20万円以上になった。また五千円くれた。「ありがとうございます」私はまた素直に受け取った。そしてメインレース。川嶋さんはその20万円以上のカネをすべて馬券に変えた。「これが当たれば300万円だなあ」などと言っていた。見事に外れた。結局、川嶋さんは1円も儲けずに馬券売り場を後にした。私は申し訳なく「あのー、いただいたおカネ、半分返します」と言った。「全額返します」と言ったかもしれない。よく覚えていない。川嶋さんは笑いながら「へえ、オマエ、そんな遠慮も知ってるんだな」と言った。「オレは博打を楽しめたし、キノシタは一万円儲けた。今日はいい一日だったよ」と言いながら決して私からの返金は受け取らなかった。◆「かっこいい!」と思った。「将来、オレもこんな大人になりたいな」と思った。

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  • 午後事業計画見直し
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