◎2017年10月19日 ---- ボス ◎
- 育ちの違い
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西麻布のバーで、大手商社に勤めるYクンに久しぶりに会った。Yクンは30歳を少し回った好青年。前回会ったのは今年の始め、寒い頃だった。その時は「なんとか年内に結婚しようと思います」などと、彼女の自慢話を聞かされた。◆「どう?順調?婚約はしたの?」私は軽くYクンに声をかけた。「あれっ、キノシタさんに話してませんでしたっけ?別れたんですよ、カノジョとは」と少し驚いた表情のYクン。だが落ち込んでいる風ではない。おそらく別れてしばらく経ったのだろう。「そっか、まあいろいろあるもんな」とだけ私は返した。◆しばらくくだらぬ話をしているとYクンが、「キノシタさんはホント優しいですね。『どうして別れたの?』とか聞いてこないですもんね」と言った。少し意外だった。「なんだ、これは、聞いて欲しいんだろうな」と私は思いYクンに尋ねることにした。「優しかぁないよ、これから聞こうと思ってたんだよ。で、なにが理由で別れたの?」◆Yクンは「待ってました」とばかりにしゃべり始めた。「いろいろと小さいことが溜まりましてね。考え方の違いですね。でも最後はラブホテルでの彼女の態度でした」・・・私は「ラブホテルでの彼女の態度」と言う言葉で、会ったこともない彼女の痴態を一瞬想像した。そうではなかった。◆「部屋を出る前にベッドの布団のめくれを直したり、タオルをきれいに重ねたりと僕はするんです。彼女はしないんです。その日も僕がベッドを片付けていたら彼女が 『すぐに掃除のおばちゃんが来て布団を取り換えるんだからそんなことしなくていいよ』とか言うんです。カチンと来ました。そういえば彼女は婦人服売り場でも畳んでいるセーターなんかをパッと広げてみてそのままそこに置いていくんです。あれ、オレ、嫌なんですよ」・・それを聞いて私は妙に納得した。私は残念ながら?ラブホテルには行ったことはないが出張で利用する普通のホテルを出るときでもベッドはキレイにする。私とYクンは同じタイプの人間のようだ。◆「Yな、そういうのは『考え方の違い』というよりもおそらく『育ちの違い』なんだと思うよ。別れて正解だと思うよ。」・・・思わずそんな言葉で慰めた。酔いのまわったアタマで私も人生を振り返ってみた。「育ち」「教育」って大切だなあ、とあらためて思った。
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