2014年12月18日の記事一覧
◎2014年12月18日 ---- ボス ◎
- おカネの大切さ
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毎年この時期になると思い出すエピソードがある。多分、昨年も今頃、この欄にそのことを書いたと思う。◆九州大学に入学した私は一般教養で「論理学」を受講していた。講師はまだ若い森俊洋先生だった。当時は助教授だったと思うが、彼は大学の先生っぽくなくスマートでかっこよかった。その森先生と昼休みに大学の近所の喫茶店で偶然お会いした。決して真面目な学生ではなかったが先生は私のことを覚えてくださっていた。「キノシタ君だったね。悪いけどあとで私の教官室に来てくれませんか」・・そんな話し方だったろうか。◆「なにごとだろう?」と教官室を訪ねると森先生は笑顔で迎えてくださった。「キノシタ君、僕がお世話になっている方の娘さんの勉強をみてあげてくれませんか?」・・苦学生の私にはありがたい話だった。そうして私は高校二年生のS子ちゃんの家庭教師になった。「夕食付、1回2時間で2500円、交通費込」ということだった。悪くない条件だった。◆S子ちゃんの自宅は私のボロアパートからバスで30分のところにあった。その日はとても寒い日だった。授業を抜け出して麻雀を楽しんでいたが途中でやめS子ちゃんの自宅へ向かった。S子ちゃんは英語は学校一の成績で問題なかったが数学と国語が苦手だった。私は、その数学と国語を易しく丁寧に教えていた。私の自慢話だが、S子ちゃんに限らず私から家庭教師を受けた子供たちはみな成績が急上昇した。「オレにもこんな家庭教師がついていたらオレは間違いなく東大現役合格だったのになあ」などと思ったものだ。◆話を元に戻そう。その寒い日のS子ちゃんの家庭教師を終え、小雪の舞うなかバス停に急いだ。ほんのちょっとの差でバスに乗り遅れた。次にバスが来るまで20分間待たなければならない。寒い。バス停はパチンコ屋の隣だった。私は暖を求めてパチンコ屋に入った。◆楽しい友人とのマージャンを途中で抜け、寒い中、2500円のアルバイト代を稼ぐためにバスに乗ってはるばる家庭教師に来た私は暖を取りにはいったパチンコ屋で3000円摩ってしまった。後悔し、自己嫌悪に陥り、うなだれて寒い中バスを待っていたあのときの気持ちを忘れない。私が「おカネの大切さ」を強く意識した最初のエピソードだ。(※S子ちゃんは上智大に進み今は医者の奥さんになっていると聞いた。森先生は定年で大学を退官されたようだが毎年、年賀状での挨拶だけは続いている。)
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