2015年03月09日の記事一覧

2015年03月09日 ---- ボス

フロリダで佐伯弁

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先々週末より米国へ出張していた。フロリダ州オーランドで開かれる「ヘリ-エクスポ(世界最大のヘリコプターショー)」に出席するためであったのだが、残念ながら今年は大きな収穫はなかった。寒い成田を発ち、もっと寒いマイナス22℃のシカゴを経由して着いたオーランドは初夏の陽気であった。30℃近いホテルのプールにはきわどい水着のオネーサンたちも多かったが、ネクタイ姿の我々はプールに近づくことを遠慮した。帰りもシカゴ経由であった。シカゴの気温は2℃になっていた。シカゴから13時間のフライトの間ずっと窓の外は明るかった。地球と逆回転でフライトするとずっと昼間が続くことを実感した◆行きがけに成田空港で『文芸春秋』を買った。今年の芥川賞受賞作『九年前の祈り』(小野正嗣)を読むためである。直木賞と違い、私は芥川賞にはあまり関心がないのだが今年は違った。作者の小野正嗣さんは私の高校の後輩である。そして『九年前の祈り』は私の郷里、大分県佐伯市が舞台である。読まないわけにはいかない◆さてその『九年前の祈り』。文章は難解ではないのだが文章の奥の深い意味が私には理解できなかった。「この本面白いよ!」と勧められる文学通の友人は私の回りにはいない。それでもフロリダのホテルで、活字になった我が郷土の方言「佐伯弁」を読むのは刺激的であった。私には高尚過ぎる文体であり、ストーリー自体も面白いものではなかったが佐伯弁は嬉しかった。そしてそして、なにより小野さんの「受賞のことば」が良かった。ここにその全文を転載する◆◆◆「三歳年上の兄、史敬(ふみたか)が昨年十月に亡くなりました。  独身で、栄誉や富とは無縁。野球が大好きで、地域の子供たちの応援に行き、缶コーヒーを飲みながらスポーツ新聞を読んでいれば幸せそうでした。   僕によいことがあれば、自分のこと以上に喜んでいてくれていたのは、両親から聞いて知っていました。   闘病中、危篤の知らせに僕が帰省するたびに、意識もないのに、「わざわざ東京から戻らせて悪かったのお」というように持ち直すのです。   朗報を直接伝えることはできませんでした。受賞はお兄(にい)のおかげ、と思う僕に、地域の人たちを愛していた兄が真剣に言うのです----そげなことがあるか、そりゃ、編集者の衆(し)、読んでくるる衆(し)、みなのおかげじゃ、ありがてえことじゃ、よかったのお、正嗣」◆◆◆私はこの「受賞のことば」を何度も読み返し、フロリダで涙をぬぐっていた。 芥川賞受賞おめでとう、小野さん。

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