2017年10月02日の記事一覧
◎2017年10月02日 ---- ボス ◎
- 社会不適合者
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母は70歳代後半にになり記憶力の低下が顕著になった。同じことを何度も話すようになった。回りの者は皆「おかしい」と気付いていたが母に直接注意できる者はいない。同じ話を繰り返す母に対し「さっきも言ったじゃあ」と言うと「そうやったかねえ、トシやけんねえ」と、自分の記憶力の低下を年齢のせいだと決めつけていた。もちろん年齢のせいだけではなかった。◆正月に帰省しているとき母が「あんた、東京には誰か高校時代の友達はおるんね?」と聞いてきた。「うん、おるよ。吉田のチカシくんとか、増井さんとか錦邊さんとか・・」と答えると「チカシくんちゅうのは海崎出身の子やったなあ」と返してくる。「そうよ、海崎出身よ・・・。よく覚えとるねえ・・」などと話して一旦その話題が終わる。三分後また母が「あんた、東京には誰か高校時代の友達はおるん?」と聞いてくる。「さっき言ったじゃない!」と言うと可愛そうなので、私はまた先ほどと同じように答える。「うん、おるよ。吉田のチカシくんとか、増井さんとか錦邊さんとか・・」するとすぐに「チカシくんちゅうのは海崎出身の子やったなあ」と全く同じフレーズが続く。同じ話を3回繰り返し、4回目「あんた、東京には誰か高校時代の友達はおるん?」と聞いてきた。私は「おらん。東京には高校の同級生は誰もおらんのよ」と答えた。「えっ?誰もおらんの?」でその会話は終わった。私はほっとした。◆春になった。「病気かもしれんから一度病院で診てもらおうよ」 姉と二人で母を説得した。母は猛烈に怒り出した。「あんたたちは私んことをボケとるっちゅうの?! わたしゃあボケとらんよ。誰でも歳をとれば記憶力は落ちるやろ!」・・・嫌がる母を何時間もかけて説得し、やっと病院に連れて行った。「初期の認知症」と診断されたが私たちは「初期ではない」と思っていた。薬を処方してもらったが母はその薬を飲むことを忘れることが多かった。認知症はどんどんと進行した。本人も辛かっただろう。◆社会生活をしていると、本人は自覚していないが明らかに社会生活不適合な人と出会う。周りの者は誰も、最初は彼が病気だとは気付かない。注意すれば治ると思って接触する。しばらくすると「これはおかしい」と気付いて病院に行くことを勧める。本人が「おかしい」と自覚している者は素直に病院に行く。翌日、「うつ病」などの診断書と処方薬をもらってくる。やっかいなのは私の母のように「おかしい」と自分で認識していない人。身内でもない者が「病院に行っておいで」とは言えない。「うつ病」も「アスペルガー」も病気。彼らを責めるのはかわいそう。「病院に行ったほうが・・・」・・自覚していない人にもしそんなことを言ったら私の母の怒りどころではないだろう。◆「わたしゃあボケとらんよ!」と大声で反発した母の姿を時々思い出す。
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