2015年12月07日の記事一覧

2015年12月07日 ---- ボス

寂しいクリスマス

boss-4

「サンタさんって本当におるんやろうか?あれは父ちゃんなんやなかろうか」 少し疑い始めたのは小学校2年生の時だった。「眠ったフリをして、サンタさんが来たらそっと目を開けてみてみよう」そんなことを思いながら布団に入った。隣には5年生の姉が寝ていた。眠ったフリをしていたが、すぐに深い眠りに落ちてしまう。気が付いたら朝だ。枕元にサンタさんからのプレゼントは・・・? ない! サンタさんからのプレゼントがない! 私は寂しくなった。隣室に眠る父母の部屋に行って、悲しそうに言った。「サンタさん、来てくれなかった。プレゼントない。」 私の悲しそうな顔を見て、父母は心配そうに、優しく言った。「えっ?プレゼント置いてなかった?おかしいなあ。でもサンタさんが来ないことはないと思うけどなあ。あっ、サンタさん忙しいからエントツから入って来て、そこに置いて出て行ったんかもしれんよ」 当時、まだ薪で風呂を沸かしていた。私と姉は風呂の焚口に急いだ。あった、焚口のすぐ脇に、姉と私へのプレゼントが置いてあった。◆それが、サンタさんからの最後のプレゼントであった。そのクリスマスから十日も経たない翌年1月3日、悲惨な交通事故に遭い、父は死に、母は入院3か月のあと後遺症に苦しむ生活になる。その事故で、私は生え変わったばかりの前歯を折った◆父が居なくなった我が家は、母の出身地である佐伯市へと転居していた。大きな家の、二階に間借りしていた。一階の主はとても優しく、不幸にあった私たち母子にとてもよくしてくれた。男の子が三人おり、長男は私の同級生であった。私と彼はすぐに仲良しになった。彼は大きな玄関から出、私は彼の家の廊下を通り小さな勝手口から出入りしていた。同級生であるから共通の友人も多かった。二階の我が家へ同級生を上げることはできなかったが、一階の友人宅で同級生たちと遊ぶことは多かった。小学校2年生の3学期に転校してきた私は、3年生になり同級生のリーダーになっていた。成績はトップ、体育も図工も音楽さえ良くできた。正義感も強かった。多くの友人が慕ってくれた。そんな中で「父親のいない、初めてのクリスマス」を迎えた。◆「父ちゃんが居なくなったから、ウチにはサンタさんは来ないよ」母が言った。「サンタなんかいないんよ。あれは父ちゃんやったんよ」姉が言った。私は、そのことを既に十分に理解していた。「父ちゃんが死んだから、うちは貧乏になった。友達の家の二階に間借りしちょる。父ちゃんが死んだから、もうサンタさんは来ない。父ちゃんが死んだから、クリスマスプレゼントはなくなった」すべて、すべて理解していた。誰にも文句を言えなかった。とても利口な小学校3年生であった。誰も悪くない。◆小学校3年生のクリスマス。冬休みに入っていた。サンタにもらったプレゼントを持って多くの友人たちが遊びに来た。一階に住む同級生のところに来て、二階の私を呼ぶ。みんなは当時流行していたGIジョー(ジー・アイ・ジョー)人形を持っていた。「もとみちゃんはサンタさんになにをもらったの?」・・・なんの悪意もない同級生の言葉に私はとても悲しくなった。◆運動が苦手な子供が運動会が近づくと憂鬱になるように、裕福な友人宅の二階に間借りしている貧しい小学生の私にとってそれ以来、毎年クリスマスは一年で最も寂しい日であった。今でもこの季節になると、あの頃を思い出し、涙があふれてくる。小学生の自分に向かって「よく頑張ったね」と褒めてあげる。

... 続きを読む

コメント (0)

2024年04月26日 ボスの
スケジュール
  • 午前机まわり整理
  • 午後防衛案件会議
  • 夕方新橋「有薫酒蔵」で飲み会
2015年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
« 11月   1月 »

カテゴリーリスト